流華の楔
許婚など、嘘八百。
そうは言ったけれど。
縁談が進めばそうなるのだろう。
「さよなら」
「…は?」
「もう、新選組に関わることはないでしょう」
「っ、やめろ…」
「皆さんにもよろしくお伝えください。“副長さん”には特に」
「ふざけるな!」
初めて聞く怒声。
思わず、斎藤を振り向いた。
「戻らない? ふざけるのも大概にしろ。あんたのこと、どれだけの人間が心配していると思ってんだ…!」
「………」
違う。
心配とか、そういう問題じゃない。
戻りたくても、戻れない。
この男と再開した瞬間に、望みが絶たれたのだ。