流華の楔
「すみません…事情も知らず、出過ぎたことを…」
慌てて頭を下げた。
「いや、別に構わないですよ。随分昔のことですし」
和早の心情とは裏腹に、斎藤の唇が綺麗な三日月を描く。
「しかし…、」
「うーん……新選組の皆もいないし、やっぱり話すとしますか」
遮るように、“いつもの”斎藤が軽い調子で呟いた。
両腕を後頭部に回して「にっ」と笑う様は、和早の顔をますます曇らせた。
「話すとは……その、殺された初恋の方の事ですか…?」
「ええ、もちろん。ここで会ったのも、何かの縁かもしれませんしね」
「……、」
なぜか、言葉を返すことができなかった。