流華の楔
沖田、藤堂、そして和早。
異色の組み合わせで甘味処へ行ってからというもの、いろいろな隊士から『何故誘ってくれなかった』と苦情が相次いだ。
「てめぇらいい加減にしねぇか!たかが甘味ぐらいでいちいち癇癪起こすんじゃねーよ!」
しまいには土方が怒鳴り付ける。
すると、藤堂と斎藤がすかさず反応した。
「たかが甘味ってなんすか! 俺にとっちゃ命の次に大事なモンすよ!」
「癇癪なんて起こしてないし。それに、みんな和早ちゃんと甘味処に行きたかったからあんなこと言ってるみたいですよ」
そういう斎藤も『次は俺と行こう』と言った隊士の一人だった。
「ったく、揃いも揃って浮足立ちやがって。近藤さんも何とか言ってくれよ…」
「ん? あ、ああ、そうだな…。いかんぞ、お前たち」
近藤のやる気のない叱責に、土方の眉が釣り上がる。
「近藤さん、あんたまさか――」
一緒に行きたかったのか?
つい続きを口に出しそうになった土方であったが、危ういところで飲み込んだ。
他隊士を『浮足立っている』と言ってしまった手前、近藤まで同類にするわけにはいかなかった。
「あー…もうこの件はなしだ、なし!」