流華の楔
それから数ヶ月後、春が何者かに殺された。
彼女の身には大きな傷があり、切り口から、刀傷だろうと判断した。
武士か……。
涙もない。
彼女の身内にかける言葉もない。
ただ、ふつふつと沸き上がる憎悪だけが己を支配した。
見つけ出して、殺してやろう。
そう決めた。
『お春を殺った輩を知らないか?ああ、それは俺だ。あいつと関係を持ったことが親父にばれちまってな。家の汚点だと言われたから、やむなく斬ったんだ』
飄々と。
一番有り得ないと思っていた男が。
彼女を愛していたはずの男がそう言った時、斎藤の手は無意識に刀の柄へと移動していた。