流華の楔
「じゃあそういうことでいいね。佐上にも言っておくから」
「……はい」
大切なものを護る。
平然と、ただ命令に従って人を殺めてきた己に、足りなかった意識。
それが、今更になってわかった。
「(…護る、か)」
最初で最後に、そんなことをしてみるのも良いかもしれない。
漠然と考えた、その時。
『お前は……それでいいのか』
突然耳に響いた。
土方の、慣れ親しんだ声。
『会津公に対するお前の忠義は、全部嘘だったのか』
…――違う。
そんなわけがない。
会津公は事情を知りながら自分を受け入れてくれた。
恩義は、ある。
『なら、その忠義を貫くのがお前の責務だろう。お前の誠は、どこにある―…?』
.