流華の楔
「斎藤さん」
いつものように姓を呼んだ。
けれど、反応がない。
部屋の隅で刀を抱えながら眠っているのは、間違いなく斎藤だ。
襖を開けても気づかないなど、おかしくないだろうか。
これは何事、と多少顔を引き攣らせながら彼の前に膝をつく。
「あの……斎藤さん?」
「………」
また、反応なし。
「(……生きている、よな?)」
顎に手をそえながら、斎藤を眺めてみる。
外傷はない。
寝息も聞こえる。
なら揺さぶってみようか、と手を伸ばしたのだが。
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