流華の楔
「大丈夫。今、起きた」
長い睫毛が揺れ、顔がゆっくり起こされた。
改めて、本当に綺麗な顔立ちだなと思った。
「私じゃなかったらどうしたんですか」
「そん時はちゃんと起きる。来たのが和早だと思ったから、安心して寝てた」
「………」
いったいどういう理屈なのか。
笑顔を見せる斎藤に、それを聞く気力はなくなった。
代わりに苦笑を返す。
「そういえば……待っててくれたんですね、斎藤さん」
「待つと、決めていた。近藤さんと伊東さんも来ていたが、先に立ってもらった」
そう言うと、斎藤はその場に立ち上がった。
「それと……気づいているとは思うが、今回長州に来たのは――」
「知ってます。その件については、申し訳ありませんでした。本来ならば受諾しなければならないものを、拒否する形となってしまい……」
.