流華の楔
◇第五幕
帰隊
帰路の最中、斎藤は頻りに寄り道したがった。
何故。
理由は簡単。
斎藤と共に同行したであろう幕府関係者に、和早の存在を悟られたくない。
ただそれだけ。
早く進めば進む程、前を行く幕府の密使に出くわす可能性がある。
それを考慮したのだ。
和早はそこから憶測を広げた。
斎藤は自由が幕府の関係者であることを知らないはず。
そこまで避けているのは、おそらく新選組の誰かがその中にいるからだろう。
「和早、この辺にどこかいい宿はないか?」
先を行く斎藤が、和早を振り返って尋ねた。
穏和な表情。
その心遣いが、嬉しいと思った。
そして。
持ちつ持たれつ、帰路は続いた。
誰にも、遭遇することなく――。
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