流華の楔



「…新崎と申します。若輩者ですが、どうぞよろしくお願いします」


深々と頭を下げる。

こうすることで、芹沢がどう反応するのか見たかった。



忠実そうな男だととらえ、芹沢一派に引き込もうとするか。

はたまた軟弱な人間だととらえ罵るか。






「ほお…」


反応は意外にも普通だった。
芹沢はニヤリと笑い、近藤の方を向く。



「コイツ、いい目してるぜ。最近じゃあ滅多にお目にかかれねぇ代物かもな?」

「…は、はあ?」


近藤たちの顔に『一体どういうことだ?』という疑問の色が浮かぶ。



「ま、せいぜい逃がさねぇように見張っとくこった」


“獣はすぐにげるからな”

去り際に放った言葉は、和早以外の誰の耳にも届かなかった。



「(……獣、ね)」



外れてはいない。
むしろ、限りなく近い。


芹沢は、和早が女であることを見破る代わりに、彼女の内に眠る獣の姿を嗅ぎ取った――…



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