流華の楔
「……ありがとうございます」
それだけで十分だろう。
この男ならきっと、己の意図を理解する。
「……当たり前だろうが。お前がいねぇと……あ、いや…何でもねぇ」
月明かりでもわかるくらい、土方の頬が微かに染まっていた。
和早は内心「勘は正しかった」と思いながら、口を開く。
「唯一の枷だった実家は、もうなくなりました」
「……あ?」
「捨ててきました」
和早には珍しく、晴れやかに笑った。
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