流華の楔
呆気に取られた隊士たちは、しばしの間沈黙したまま固まっていた。
あんな芹沢を今まで見たことがあったかだろうか。
「……すげーな」
「…ああ。あそこまで褒めちぎるとはな……さすがの俺もビックリだぜ…」
藤堂の声を皮切りに永倉が苦笑いでそれに続くが、当の和早は未だ沈黙し一転を見つめたまま動かない。
「おーい、新崎ぃ…?」
「……あ…はい、なんでしょう?」
藤堂の呼びかけにまで反応が遅れるなんてらしくないな、と心の中で少し笑う。
「おまえ大丈夫か? ぼーっとしてっけど…」
「……そうですか?」
「うん。……あ! もし芹沢さんになんかされたりしたら、俺らに言えよ!」
ニカッと笑う藤堂。斎藤や永倉、原田もそれに同意するように頷いた。
「ご心配、痛み入ります」
和早は言葉少なに微笑む。
彼らの心遣いが、心から嬉しかった。
容保の期待を裏切らない、彼のお預かりという立場に相応しい者たちだったと判ったことも――。