流華の楔
副長室――。
『いいのか、それで』
静かに、土方が問う。
微妙な距離を置いて向かい合っていた土方と斎藤。
土方の射るような視線が注がれれば、斎藤は首を僅かに竦めた。
「いいのか」と言われても、できる選択は限られているでしょうに。
斎藤は密かに毒づきながらもニヤと笑い土方を見据えた。
「構いませんけど」
斎藤は“いつもの”調子で口を開いた。
「ならいい。…だが、忘れるな。お前はこっちのモンだ。間違っても毒されんじゃねーぞ」
「……わかってますよ。長州遠征の時だって、ちゃんと仕事しましたでしょ」
「伊東さんの監視とかね」と軽い口調で言えば、
「お前っ、馬鹿野郎……滅多なこと言うな」
土方は室外を気にしながらそう咎めた。
.