流華の楔




今夜の月は綺麗だ。


独り歩きする真情を嘲笑うかのように光り輝くそれに、土方の表情が曇る。




皮肉とでも言おうか。


見たくないのに、目が離せない。







「まさかあいつ……気付いてるよな、俺の気持ちに」



口に出たのはまたしても彼女に関係することで。

次の瞬間、無意識に口走ったことを猛烈に後悔した。





「何の話ですか」



「はっ? か、和早…! な、何でもねえよ……」




間が悪すぎる。

土方は己の運のなさを呪った。



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