流華の楔





いっそのこと全部聞かれていれば気持ち良かったかもしれない。


思い虚しく、和早はもう一度問い掛けてきた。






「今、気付いているとかなんとか言いませんでした?」



「……ああ、言ったな。確かに」





なぜそこだけ。

「あいつ」と「俺の気持ち」の所だけすっきり聞き逃してるというか。


ある意味、器用だ。






「最近土方さん、独り言が多い気がしなくもないですね……」



「……悪かったな」



誰のせいだよと突っ込みつつ、彼女を見る。








整った横顔。



男の格好でなく、女の姿だったら――今まさに手を出しかねなかった。







やはり、綺麗だ。





女の形の良い唇が、僅かに動く。





「友好的離脱…」


「…あ?」


「……でしたっけ?」



すとん、と腰をおろす和早。

話が切り替わったことに気づくのに、少々時間がかかった。




.
< 247 / 439 >

この作品をシェア

pagetop