流華の楔
いっそのこと全部聞かれていれば気持ち良かったかもしれない。
思い虚しく、和早はもう一度問い掛けてきた。
「今、気付いているとかなんとか言いませんでした?」
「……ああ、言ったな。確かに」
なぜそこだけ。
「あいつ」と「俺の気持ち」の所だけすっきり聞き逃してるというか。
ある意味、器用だ。
「最近土方さん、独り言が多い気がしなくもないですね……」
「……悪かったな」
誰のせいだよと突っ込みつつ、彼女を見る。
整った横顔。
男の格好でなく、女の姿だったら――今まさに手を出しかねなかった。
やはり、綺麗だ。
女の形の良い唇が、僅かに動く。
「友好的離脱…」
「…あ?」
「……でしたっけ?」
すとん、と腰をおろす和早。
話が切り替わったことに気づくのに、少々時間がかかった。
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