流華の楔









「――っ、そこまで!!」






互いの刃が静止する。



藤堂の刀は地面、和早の刀は藤堂の首元で――。





攻撃の手段を失った藤堂は、反撃の余地を与えられることなく地に手をついていた。




藤堂に比べ、和早は息一つ乱れていない。







「は、あはは……負けた、か…」




和早の“本気の剣”に驚愕する隊士が騒ぎ出しても、藤堂の声が鮮明に聞き取れた。





「すみません。けど、私は“本気でやらなければ”ならなかった」



勝っても、負けても。

本気の剣でなければ、きっと後悔したと思う。






「いいさ。おかげで自分の気持ちにケリついたし!」


「……なら、良いのですが…」



「お、おーい? そんな暗い顔すんなって! そもそもこの試合は俺が無理に頼んだんだぜ?」



永倉や原田に助け起こされながらも、そう言いながらこちらに笑みを向けた。
















その笑顔は、なぜか少しだけ哀しく感じられた――。






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