流華の楔
「……いない、か」
屯所内をふらふら歩きながら、ぽつりと呟いた。
足を止めたのは、藤堂の部屋の前を通り、斎藤の部屋を過ぎたあたりだった。
人の気配がない。
それにどうも、隊の士気が足りない気がする。
「…………」
仲間の存在が、これほどに尊いのか――。
と、彼らがいなくなって初めて思い知らされた。
「……あれ? 新崎さん、どうしたんですかこんなところで」
「―――!?」
奇妙な裏声に、背後を振り向く。
「よお」
「ああ、永倉さんでしたか…」
誰かと思った。
この時、刀に手を掛けかけたのは内緒である。
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