流華の楔





屯所の雰囲気が暗くなった時に場を盛り上げるのは、たいてい永倉だ。


この男は豪快に見えて、実は繊細な心を持っていると真摯に思う。



それゆえの気遣いが、今さらながらに身に染みた。







「あのさ、新崎……」


「……?」



目的もなく歩き始めた最中、真面目な顔で永倉が口を開いた。





「実はよ……俺、伊東さんに誘われてたんだ。御陵衛士に入れってさ」



「……そうだったんですか?」


「ああ」




そういえば。
土方の説明を聞いた際、永倉の名前がちらと上がっていたのを思い出す。






「自分で言うのもなんだが……こっちだって即戦力をホイホイ差し出す程甘くない。んで、結局斎藤が行くことになっただろ?」



「………」




永倉が立ち止まる。

和早も足を止め、斜め後ろの永倉を振り返った。





.
< 266 / 439 >

この作品をシェア

pagetop