流華の楔
屯所の雰囲気が暗くなった時に場を盛り上げるのは、たいてい永倉だ。
この男は豪快に見えて、実は繊細な心を持っていると真摯に思う。
それゆえの気遣いが、今さらながらに身に染みた。
「あのさ、新崎……」
「……?」
目的もなく歩き始めた最中、真面目な顔で永倉が口を開いた。
「実はよ……俺、伊東さんに誘われてたんだ。御陵衛士に入れってさ」
「……そうだったんですか?」
「ああ」
そういえば。
土方の説明を聞いた際、永倉の名前がちらと上がっていたのを思い出す。
「自分で言うのもなんだが……こっちだって即戦力をホイホイ差し出す程甘くない。んで、結局斎藤が行くことになっただろ?」
「………」
永倉が立ち止まる。
和早も足を止め、斜め後ろの永倉を振り返った。
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