流華の楔





その後。


何故か屯所に戻る気になれず、沖田と中村を先に行かせた。




「病、か…」



人の波を縫うように歩きながら、ぽつりと呟く。


中村の妹、幸は、不治の病を患っていた。


兄は本人に隠していたらしいが、幸は知っていた。


兄の心遣いを、喜んでいた。



「………」



なのに、己は何もできなかった。



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