流華の楔
「京(ここ)でどれほど斬りおった」
「…さあ? それが殺したという意味なら覚えが無いほどだな。斬っただけならそれ以上」
「くっくっく……流石よ。それこそ真の長のあるべき姿」
人が聞けば震えるか罵るであろうその返答が気に召したらしく、燕尚なおさら声をあげて笑った。
だが和早は表情ひとつ崩さず燕尚を睨み、にわかに口を開く。
「ひとつ言っておく」
「ほう。何だ」
「…私は長の器などではない」
言えば、燕尚はさも驚いたようにわざとらしく息を飲んだ。