流華の楔
夕暮れ時。
ちょうど、巡察に出ていた沖田が帰ってきた頃。
「皆に話がある。広間に来てもらえるだろうか」
一休みしようと腰を下ろした瞬間近藤が現れて静かにそう言った。
本人は平静を装っているらしいが口元がわずかに歪んでいる。
「………」
なにか良いことでもあったんだろうなと沖田はにらんだ。
「話ってなんだろうなー。さっきのお偉いさんと何か関係あんのか?」
「あれ、新八さん…お疲れ様です。ひとまずいってみましょうか。近藤さんのニヤケ顔も気になることですし」
「(に、ニヤ…?) ああ、そうだな。てかよ、他の奴らはどうしたんだ? ここにいんの俺と総司だけだよな…」
「え…そうなんですか? どこかその辺にいるとかじゃ…」
芹沢達はいいとしても、他の皆がいないのは少々気になる。
「(…和早さんも見当りませんし)」
沖田は首をひねった。
もしや、平助か斎藤あたりが彼女を連れ回していたりするのだろうか。
あの人達は彼女の事を気に入ってるわけだし有り得なくもない。
「……ま、僕には関係ありませんけどね」
そう、関係ない。
彼女の存在など、自分には関係ないのだ。