流華の楔
別に、理由もなく気に入らないと思っているわけではない。
自分は鬼ではないのだから。
「……だいたい、どう考えたって怪しいじゃないですかあの人」
「…あ?」
斬ろうとしても隙がない。
華奢なのに土方さんの攻撃を平気で受け止める。
松平公の側近とかいう人と偶然会ったにしては話し込んでいたし。
「…おい、総司?」
男の格好してるくせに男に好かれるわ、無駄に綺麗だわ。
「お前、百面相にも程があるぜ…」
「…なんか、むかつく」
「へ?」
何故今この瞬間、彼女を気にしなければならないのだろうと沖田は思う。
こんなにも気に入らなくて仕方がないのに。