流華の楔
和早が退室した後、土方は大きく息を吐いた。
「何で緊張してんだ、俺」
ありえない。
初心でもあるまいに、二人きりになっただけでこの心拍数。
今までだって普通だったのに。
「よっぽど好きなんですねー彼女のこと」
「あ? そりゃあ好……って総司! てめぇまた勝手に…!」
置物と同化して潜んでるとかどんだけ。
いっそ忍になればいい。
「斎藤君がいないからって二人きりでしっぽり…なーんて考えない方がいいですよ。世間的には三つ巴なんですから」
「考えてねぇ!!」
しっぽりとかどこで覚えて来んだ。
置物と同化したまま言われると何かムカつくな。
土方は心中で舌を打った。