流華の楔
最期の微笑み
伊東暗殺計画、当日。
「おっ、おおおぉう! 眩しすぎる!」
自らの妾宅に雄叫びを響かせる近藤に、皆「何事か」と集まって来る。
そしてそれを見てしまった者は、呼吸さえ忘れた。
「……び、美女!」
「鼻血出てんぞ、新八」
「………」
艶やかな深紅の着物を纏い、遊女のように着崩す和早。
その美しさは、装飾さえ霞むほど。
「こりゃあ、太夫にも勝るぜ」
「ふふっ、正直なお方」
土方の感嘆に反応したのは、近藤の妾である深雪太夫。
劣るとされても太夫は気にすることなく微笑み、彼女を土方の前に押し出した。
「あっ…ちょっと!」
「おわっ」
太夫の企み通り、体勢を崩した和早が土方の胸に倒れ込む。
「ほーんと、男にしておくのがもったいないこと!」
言って、太夫は土方に向かって片目を閉じた。