流華の楔



太夫の勢いに圧されて部屋の隅まで移動。

何やら悪いことをした、らしい。



「日を改めませんか。局長からお聞きになっているかと思いますが、今日はその…」

「あら! そんなこと関係ありま、 」

「太夫。こいつに何を吹き込んでるか知らねぇが、離してやれ」

「まぁ!」



土方に諭され不満げな太夫は、後で痛い目見ますわよ、と意味深な捨て台詞を吐いて出ていった。



「まぁ、気にすんな」

「…は」

「あーそれな、やめねぇか」



視線を合わせる事なしに歯切れ悪く言う土方。
頬を掻き、あーと唸った。



「つまり、普通の女みてぇに話してくれたら…」

「ああ、そんなことですか」

「…な」



遅かれ早かれ、酒の席ではそうするつもりだった。

練習と思えば何ら問題はない。



ただ、声色と口調を変えるだけだ。





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