流華の楔
凛音
何本かの通りを抜けたところで永倉の背が見えた。
絶賛待ち伏せ中らしい。
ある程度近くまで寄り、声をかけた。
「永倉さん」
「う、おおおぅっ」
「…びびりすぎだ新八」
すかさず原田がなじる。
永倉は「びびってねー!」というが、握る刀が音をたてている。
俄然びびっていた。
「んで? 新崎は援護?」
「あ…はい。藤堂さんのことも気になるので」
「そっか。ま、あんまり心配すんなよ?」
原田は槍を構え、一閃した。
その反動で持ち手の部分が永倉の頭を直撃。
「痛っ、やるかコルァ!」
また、騒がしくなった。
和早は彼らから離れ、放置された塊を認める。
逃げることができたのにそうしなかった男。
「伊東甲子太郎、か…」
惜しい人を亡くした。