流華の楔

凛音





何本かの通りを抜けたところで永倉の背が見えた。

絶賛待ち伏せ中らしい。
ある程度近くまで寄り、声をかけた。



「永倉さん」

「う、おおおぅっ」

「…びびりすぎだ新八」



すかさず原田がなじる。
永倉は「びびってねー!」というが、握る刀が音をたてている。

俄然びびっていた。



「んで? 新崎は援護?」

「あ…はい。藤堂さんのことも気になるので」

「そっか。ま、あんまり心配すんなよ?」



原田は槍を構え、一閃した。
その反動で持ち手の部分が永倉の頭を直撃。



「痛っ、やるかコルァ!」



また、騒がしくなった。


和早は彼らから離れ、放置された塊を認める。
逃げることができたのにそうしなかった男。



「伊東甲子太郎、か…」



惜しい人を亡くした。


< 312 / 439 >

この作品をシェア

pagetop