流華の楔
和早が真っ先に斬り結んだのは、篠原泰之進。
背後では永倉と藤堂が相対していた。
「新崎! くそっ、参ったな…あんたとは戦えねぇってのに」
刃が交わる。
「っ、どういう意味だ!」
押し合いでは埒があかない。
力を一点に集中させ、抜身を払った。
「理由は知らねぇが…伊東先生の、言いつけでなっ!」
「……わかった、もういい」
刀を正眼に構える。
どちらからともなく斬り込んだ末、和早は篠原の右腕、篠原は和早の脇腹をえぐった。
…引き付けるためとはいえ、少々無理をしたか。
「…これでお前はしばらく刀を握れない。痛み分けだ」
「ちっ…!」
「あんた方の事情がどうであれこちらが譲歩する理由はないからな。命あっただけマシだと思え」
倒れた篠原の首に切っ先を当てる。
篠原は恐怖に後退り、逃げるように走り去った。