流華の楔




やっぱり綺麗だ──と、藤堂は和早が己が袖口で篠原の血を拭きとる所を場面を横目で見ながら思った。

剣の軌道、身のこなし、全てにおいて彼女に優る人間はいない。そう感じる。



「………」

「どうした平助、余所見たぁ余裕じゃねぇか!」

「…あっ、ゴメン!」



見とれている場合ではない。
今は、こちらに集中しなければ。



「オルゥアァア!!」

「くっ…新八さん腕上げた?」

「は! オメェが落ちたんじゃねーの、ってな!」

「言う、ねぇっ!」



まずい。
刃が欠けてきた。

これだけの力で拮抗すれば永倉の刀も同様に違いない。まず長期戦は無理だろう。



「あーやめだやめだ。こんな茶番やってられっかよ」

「……え?」


長いつばぜり合いに終止符を打ったのは永倉の声。

藤堂は何故と問う。



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