流華の楔






「ここから離れろ平助。んで、新選組に戻って来い」

「……え?」

「俺の独断じゃねぇよ。土方さん直々のお達しだ」



永倉はそう言って笑う。



「そう、なのか…?」



周囲の音が全然聞こえなくなるくらいに、藤堂は彼の言葉を聞いて驚いた。

しかし、自分には資格がない。
皆の隣に堂々と立てる資格が。



「でも、ごめん、俺、無──」

「テメェさんに拒否権なんざねーよ。わかったらさっさと逃げろ!」

「……!」


永倉の友として、仲間としての一手が、藤堂の背中を押した。



「っ、ありがとう新八さん!」



夢中で駆け出した。

だからその時。
馬鹿みたいに感極まっていたせいで。


気付けなかった。




「三浦止ま──っ、藤堂さん後ろ!」




駆け出した藤堂の背を狙う白刃に。







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