流華の楔




監察方、山崎の任は戦況を確認すること。

もどかしい。


同僚の新崎があれだけの怪我を負っているというのに、助けることさえしてやれないのかと山崎は思う。



「早く終わってくれ…」




負傷しているのは彼女だけではない。
これだけの精鋭を相手にすれば、当然の如く死者が出る。


あの原田でさえ、左手に傷を。



「藤堂さん…? 永倉隊長が逃がしたのか…」



藤堂が人の少ない場所を縫うように駆けている。
抜刀しているが、危険だ。

脇と背後ががら空きではないか。



「あっ…新崎さん!」



彼女もそれを察したらしく、相手を瞬殺して藤堂の方へ向かった。

刹那、藤堂に迫る黒い影。
武装した平隊士だ。


藤堂は、気付いていない!



「三浦止め──っ、藤堂さん後ろ!」



新崎が叫ぶ。

地獄のような戦いの中の、凛音。


そして、彼女は。






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