流華の楔
◇最終幕
鳥羽・伏見の戦い
大政奉還、続く王政復古の大号令による新政府樹立に不満を抱いた旧幕府軍は、大坂に退いた慶喜を感化し「倒薩」を掲げて京へ集う――。
新選組も例外なく出動しているが、負傷した近藤は療養のため居らず、土方が代わりに指揮を執るという状況だった。
「…和早」
「は」
和早は一礼し、容保の面前に膝をつく。
会津藩と新選組は同じ伏見奉行所を宿営地としているため、ここまで出向くのは容易かった。
ただ、土方の視線が冷たかった気がしなくもないが。
「今回の戦、どう見る」
「……厳しいですよ。相手も同じ敗戦を繰り返すほど馬鹿ではありませんから」
薩長はこの時のために外国から大量の武器を仕入れ、訓練を重ねてきているだろう。
故郷の城で見た、あの帳簿に記されていた通りの新型兵器を。
「さらに言えば、薩摩の最前陣地がこちらより八間あまり高くなっていますから……かなり不利な状況ですね」
「…うむ。しかし、負け戦をするのは心苦しいな」
俯く容保。
どうやら負けると決め込んでいるらしいが。