流華の楔
三日午後。
薩摩の砲撃により、戦が始まる。
土方を筆頭とする新選組は戦況を見つつ、奉行所の東から白兵戦を仕掛けることになった。
しかし、薩摩軍が打ち込んでくる正確な大砲に打開策を見いだせぬまま、刻々と時は過ぎていく。
「なんだかなぁ…」
ぶつぶつと不平を漏らす永倉に、配下の島田が近寄る。
「どうしました?」
「いや、何故か身体が重くてな…風邪か…?」
長い溜息の後、永倉は首を鳴らす。
島田は確信した。
この人は別に体調が悪いわけではない。
ただ単に…。
「……甲冑の着込みすぎでは」
「あ、そっか。なら問題ねぇわ! 行くぜ島田!」
「…え」
さっきまでの満身創痍ぶりが嘘のように塀を乗り越えていく永倉。
というか、出撃命令はまだ——。
「しまだー!!」
「あ…ハイ、今行きます!」
間髪入れず向こう側から聞こえてきた呼び声に、島田以下数名の隊士は慌ててその後を追った。