流華の楔
その結果。
「うっわ砲煙弾雨四面楚歌支離滅裂だチクショー!!」
「意味わかりません隊長!」
「そのまんまじゃい阿保んだらァアア!!」
容赦なく浴びせられる小銃弾に追われながら永倉一同は退散した。
怪我人が出なかったのは奇跡に等しい。
「っ、嘘だろ…」
一太刀も相手に届かない。
そんなこと、今までにあったか。
「…隊長」
「あぁ、何だ」
「うちの大砲って、二門でした?」
島田に問われ、頭上を見上げた。
「何言ってんだ、さっきは一門しか……あれ?」
おかしい。
敵側に飛んでいく砲弾の軌道が二つある。
つまり二門。
しかも片方は飛距離が長い上に正確さが抜群だった。
「何で?」
「いや、俺に聞かれてもわからないですけど…」
「…あ、俺わかった」
また土方が上に噛みついて手に入れたに違いない。
あの人なら、やりかねない。
永倉はそう思いながら、前のめりに倒れた。
嗚呼、疲労が祟ったらしい。