流華の楔




「俺が今もこうして生きちょるのは、和早が助けてくれたからぜよ! 新選組のおかげぜよ!」


龍馬はありったけの声を絞って叫ぶ。


「それをおまんらは…っ、見損なったぜよ!」

「……」



ああ、そういえば。

その様子を半ばぼんやりと聞いていた和早は、程なくして切腹の妥当性を悟る。



「坂本、無駄だ」

「何でじゃ! おまんは近藤さんが死んでもええっちゅうがか!?」

「違う、そうじゃない…」



新選組は今の今まで、長州をはじめとする攘夷勢力を討伐してきた。

たとえ坂本龍馬の件が冤罪だと見做されたしても、余罪は掃いて捨てるほど存在する。


彼らの恨みは「近藤の死」無しでは晴らされない。



「俺はのぅ、和早…」

「…?」

「友が死ぬのを黙って見てることはできんぜよ!」



幕末の風雲に乗じた龍が、猛然と吠えた。
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