流華の楔




「新崎君! 坂本君!」



龍馬の思いに応えるように、近藤が咆哮した。

そしてそのまま差し出された短刀を握る。



「皆、ありがとうっ!」

「局長!!」


その意図を読み取った和早が駆け寄ろうとするも、鉄砲隊に阻まれて叶わない。


近藤は、笑っていた。



「武士として死ねるのは最高の誉れだ。…ありがとう、新崎君」



そう言って、近藤は自らの左腹部に刃を突き立てた。

すぐさま介錯人の白刃が振り下ろされる。



その瞬間。


新選組局長として。

そして、幕末を駆けたことりの侍としての。


波乱に満ちた生涯が、幕を下ろした。







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