流華の楔
助けられなかった。
そんな言葉は綺麗事にすぎない。
心のどこかで不可能だとわかっていたから、助けなかったんだ。
ここまで来ておきながら。
「…っ」
龍馬は立場を捨ててまで助けようとしたのに。
端から見れば、さぞ薄情に映っただろう。
「新崎様」
立ち尽くす和早の前にひとりの男が歩み寄る。
声の主は、見ずともわかり得た。
「…佐上か」
「申し訳ありません」
久しぶりに再会した幼馴染は、こちらを見ることも微動もしない。
ただ、謝るだけ。
言いたいことがあるなら言えばいい。
そう思うのに、口に出す気力さえ残っていなかった。