流華の楔




会津。

事の次第を全て聞いた土方は、一呼吸おいて「そうか」とだけ呟いた。

沖田にはそれが腹立たしくて仕方なかった。



「…何なんですかその反応は。彼女が本当は長州の枢軸だったから死んで当然だとでも思ってるんですか? 命を賭して近藤さんの名誉を守ってくれたのに!」

「……」


土方の瞳が揺れる。


“そんなわけないだろう”
そう言いかけた時、襖が開いた。



「…っ、松平様!」


突然の訪問者に驚く一同。

このような所に易々と来れるような方ではないはずなのだが。



「畏まるな、そのままでよい。して沖田…今の話は真なのだな?」

「は。ですが、松平様のお耳に入れるようなことでは…」

「ははっ…そう思うか?」


小さく笑う容保の顔には、やるせなさが滲んでいた。



「和早は私の無二の側近であり、私にとってはかけがえのない女だった」

「…っ」


不思議そうにする沖田とは対照的に、土方は悔しそうに俯いた。


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