流華の楔
土方は海軍副総裁、榎本武揚と合流し、戦地を蝦夷へと移した。
後の十月二十六日。
松前藩との戦を経た五稜郭無血開城後、榎本は蝦夷共和国総裁、土方は陸軍奉行並に任ぜられた。
が、土方にはひとつ不満がある。
「勿体ねぇなあオイ…」
豪華な食事と集った異人を前に土方は低く唸った。
蝦夷平定の祝賀だか何だか知らないが、見栄を張るにしてはやりすぎだ。
この費用を軍資金に回すべきではないのか。
「お偉いさんがする事はこれだからいけねぇぜ…」
ち、と舌打ちをする。
洋装も着心地が今一つで、これなら無理にでも和装にしておけば良かったと思った。
「さて、そろそろ戻…」
酔っ払いに絡まれる前に、部屋に戻って休もう。
そう思い立った時。
「…あ?」
土方は思わぬものを見た。