流華の楔




総裁室。



「本当にこれで良いのだろうか…」


広い部屋の中央にある「蝦夷の地形」の模型で布陣を模索しつつ、榎本は神妙な顔付きで呟いた。



「まあ──」


その隣。

当然のように榎本と並ぶ葵が、敵に見立てた駒を弄びながら口を開く。


「表沙汰には徹底交戦、裏では秘密利に和平交渉。戦における大原則ではありますが…今となっては相手も応じはしないでしょう」

「引き返すには遅すぎたのだな…」

「ええ。我々に残された道は、徹底交戦のみです」


手中の駒を放り投げれば、味方の駒が弾き飛ばされる。

それが何故か無性に笑えた。




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