流華の楔
「あー…そうだ。あれだな。せっかく新しい名前を貰ったんだ、祝いの酒でも飲みに行くか」
珍しいこともあるものだ。土方が進んで酒の話をするとは……やはり相当動揺しているらしい。
と、何となく優越感に浸る沖田。
「……なんか、今日の土方さん、新八さんみたいですね」
沖田がぽつりと呟けば、和早も納得の表情で土方を見る。
「あ。それ私も思いました。話の切り出し方とか、特に」
「あれ。こんなところであなたと気が合うとは思いませんでした」
「くすっ、私もです」
和やかそうに見える会話にも棘が存在するのは否めぬ真実。
“女嫌い”との噂がある沖田がここまで女に関わっているのもまれであるが。
「はあ……お前ら……」
永倉と同一視されること自体あまり光栄ではないが故に、土方は困惑ぎみにため息をついた。
「とにかく、今夜は空けておくように」
それを言うなり、土方は腰を上げて足早に部屋を出ていった。