流華の楔



このままではまずいと考え、痛みをこらえて立ち上がる。


「あの、私は平気なのでお構いなく…!」


上手く笑えている自信はない。
この調子では顔色だって良くないはずだ。

土方の無言がそう語る。



「悪いが、俺の部屋に来てもらえるだろうか」

「…何故です。私は大鳥殿の、」

「良いから来い! 責任は俺がとる」



いったい何の責任だ、と葵は内心笑う。



「良いでしょう」

「…ありがとよ」


この時の土方の安堵したような顔は、二度と忘れられないくらい穏やかだった。



< 372 / 439 >

この作品をシェア

pagetop