流華の楔



静寂。


支えられながら案内された土方の自室には、思った通り無駄なものが一切ない。

葵は西洋式の寝台に座って土方の言葉を待った。



「やっぱ、似てるぜ」


土方は苦笑した。

腕を組み、机にもたれながらこちらを見つめている。



「どなたか…私に似ている方がおられるのですか?」

「ああ、いたよ。少し前に死んじまったらしいけどな」

「…すみません」


それしか言えなかった。

…嗚呼、気まずい。



「いい。しかしまぁ、そいつがアンタそっくりでよ。感傷っつうのかな…本当は二度とアンタに逢いたくなかった」

「…、では何故?」


問えば、土方は真剣な瞳を向けた。

知っている。
この男のこの目を。

知っているからこそ、怖いのだ。



< 373 / 439 >

この作品をシェア

pagetop