流華の楔
静寂。
支えられながら案内された土方の自室には、思った通り無駄なものが一切ない。
葵は西洋式の寝台に座って土方の言葉を待った。
「やっぱ、似てるぜ」
土方は苦笑した。
腕を組み、机にもたれながらこちらを見つめている。
「どなたか…私に似ている方がおられるのですか?」
「ああ、いたよ。少し前に死んじまったらしいけどな」
「…すみません」
それしか言えなかった。
…嗚呼、気まずい。
「いい。しかしまぁ、そいつがアンタそっくりでよ。感傷っつうのかな…本当は二度とアンタに逢いたくなかった」
「…、では何故?」
問えば、土方は真剣な瞳を向けた。
知っている。
この男のこの目を。
知っているからこそ、怖いのだ。