流華の楔
「アンタが和早だったらよかったのになァ…」
泣いているような。
笑っているような。
そんな表情。
そうさせているのは、紛れもなく「葵」なのだけれど。
「わたしも、代わって差し上げたい」
代われるものなら。
けれど。
騙していたという罪悪をもう一度背負うより、今の方が楽だから。
…私は、葵のままが良い。
「和早」
耳元に甘美な声音。
よりによって、鬼の副長ともあろう男が。
反則じゃないか。