流華の楔
俯いた和早の肩が小刻みに揺れる。
「くっ…あはは、まさか。これ以上“死んで”どうするんですか。さすがにもう自殺願望はありませんよ」
「じ、じゃあどうして…!」
更に食いつく土方に、和早は煩わしげに二の句を継ぐ。
「女だからという理由でなめられるのは癪なんですよ」
先程の会議での件がいい例だ。
皆、女は無能であると決めつけ、同じ立場に立つことを忌んでいる。
それがどうしようもなく癪だったし、自分の力量を買ってくれている榎本にまで害悪が及ぶことだけは避けたかった。
「まあ正直、他の指揮官が無能すぎて見ていられないというのもありますが……大半は私の意地ですね」
そう言いきれば。
「へぇ…いいねぇ。俺はそういうの嫌いじゃねえぜ」
彼はクククと、この上なく愉しそうに笑っていた。