流華の楔
「あいつ…」
時々、あの女はすべてを見透かしているのではないかと思う。
己が負傷しているのを悟り、危険を承知で何も言わずに引き受けてくれたのではないか、と。
「まじで女にしとくのがもったいねぇな…」
「そういうことなら男として接してあげましょうか」
「うおっ! いつからいたんだよ!?」
「『ち…』からです」
「ほぼ最初からじゃねーか!!」
暗がりに紛れ、入口のドアに寄りかかりながらこちらを眺める者、約一名。
何やら既視感が…と思えば、アレだ。
神出鬼没、沖田総司の得意技。
「(いや、まあ、最近どこか奴に似てきたとは薄々…って、それ最悪だな)」
…くっ、何故だ。
いつからあいつは沖田の弟子になったんだ。