流華の楔




あれこれ考えていると、和早は懐から何かを取り出してテーブルの上に置いた。



「ワイン、ね……やっぱり選別か」

「少し前に榎本さんに頂いたんですけど、開けるなら今日だと思いまして」



和早は手際よく栓を抜いていく。



「…慣れてんな」

「仕事上、土方さんよりは嗜んでますから」

「いや違うね。仕事じゃなくてもいけるクチだろどうせ」



数年前のあの宴会を思い出し土方が笑う。

他の幹部が酔いつぶれるというのに和早だけは素面だった、と。



「ああ、わかります?」

「まーな」


グラスに注がれる赤い液体に目を奪われる。


…綺麗だ。

戦場に散る血のそうで、そうではない。


純粋無垢な、名残りの杯。



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