流華の楔
こんな腕じゃなければ彼女と共に、新選組と共にいられたのに。
こんな所に留まってはいなかったのに。
と、和早の出で立ちを見るとつくづく思い知らされる。
「……」
「……」
お互い無言のまま飲み進めれば、酒が尽きるのも早い。
殻になったボトルを残念そうに覗き込む和早も珍しいけれど。
それ以上に、こんな少量の酒で眠気を覚える己も珍しい。
「(疲れてんのか…?)」
瞼が重かった。
その症状は徐々に全身に回っていく。
明らかに普通じゃない。
「あ、もうお休みになられますか?」
「…お前、何を、した?」
「? 別に何もしていませんが…お疲れになったんでしょう」
その声すら遠のいていく。
…ああ、盛られたな。
薄れゆく意識の中で、ようやくその事態に気付いた。