流華の楔
「いたぞー!」
敵兵の叫ぶ声が聞こえた。
あれだけの乱闘の後だ……情報が回っているのだろう。
二人組の旧幕兵を殺せ、と。
もしかしたら、土方の存在が知られているのかもしれない。
「ここは私が時間を稼ぎます。土方さんは先へ」
「お前一人で立ち向かって何の意味がある!? 死んじまうぞ!」
「死ぬつもりはありません。だから早く」
行ってください、と敵兵が向かってくる方角を見据えながら静かに言う。
これが最後だ。
正真正銘、最期の嘘。
「……」
土方は何も言わず、和早と背中合わせに立った。
「土方さん!?」
「お前はいつもそうだ。嘘を吐くのが下手すぎる」
「…っ、」
さすが、聡い。