流華の楔




なんて平和なのだろう。
今の今まで戦争に関わってきたとは思えないほどに、この空間は和んでいる。

沖田が絡んでいるから解りにくいが、繰り広げられる光景を見て土方と和早はそういう関係になっているのだろうと永倉は思った。



「…なあ、平助」

「なに、新八さん」

「左之は止められなかったけど、俺、戻って良かったぜ」



に、と白い歯を見せる永倉。

函館での戦が始まった頃、沖田と藤堂が離脱した永倉と原田を説得したのだが、戻ることを決めたのは永倉だけだった。

延いては新選組を、最果ての地で戦う同志を救うために。



「近藤さんにはヘッタクソな嘘つかれちまったけど、やっぱ俺の居場所は新選組しかねぇもんなぁ」



結果として救えたのは土方と和早のみだったが、それでも。



「こんな清々しい気分は久しぶりだぜ」

「…うん。そうだな!」

「くくっ、あいつらも楽しそうだしよー」



ぎゃあぎゃあと騒ぐ三人を見、永倉と藤堂は顔を見合わせて「ガキだなあ」と笑う。

血も戦も見たことのない、童子のように。




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