流華の楔
当然、驚愕から怒気に移り変わっていく表情の理由はこの馬鹿騒ぎであると斎藤は思っていた。
だが土方の怒りの矛先は一点のみに向いているようで。
「おい総司!! てめぇ寝るなら自分の席で寝ろ!! 人の嫁の膝使うんじゃねーよ!」
飼い猫の如く彼女の膝に収まっていた沖田はものの見事に蹴り飛ばされるが、起きる気配は全くない。
いや、実は起きているのかもしれないが……相当酔っていて感覚が麻痺しているのだろう。
その証拠に…。
「んがー…ひじかたー! のぉ、あんさつ…けい、かくを~いっしょにぃ…」
「暗殺計画…?」
「あー土方さん。俺今来たばっかりなんですけど、どこ座ったらいいですかねー?」
どす黒い気配が土方から流れ出るのを垣間見た斎藤は自身の保身のために話を逸らす。
万が一沖田が己の名を口走りでもしたら生涯「日の目」を見れる気がしない。
「………」
絶対おかしい。
祝言とは、もっと厳粛のはずでは。
【終】