流華の楔
そして、斎藤の真顔を見つめること数瞬。
「昨晩あなたをここまで運んだのは、和早さんですから」
「ああ、そんなこと──、は?」
生ぬるい視線と誇張された敬語の意図を理解したのはそのまた数瞬の後で。
ええええ……。
言葉にならない呻き声が頭の中にこだまする。
「ったく、羨ま…ではなく、情けない」
「………いや、もう、羨ましいならいっそ交換しませんか過去を」
「笑止」
ほよー、と魂の抜けた声で言ってみた冗談はあっさりと蹴散らされた。
「ううう…」
沖田は思う。
──泥酔といい妄言といい、僕はいつからこういう役回りになったんですか。
【終】